胃がん検診について

日本の「がん疾患」は増加傾向にあり、昭和31年以降脳血管疾患を抜いて死亡原因疾患の1位を占めています。長年、男女とも「胃がん」が、がん疾患の1位を占めていましたが現在では男性では肺がん、女性では乳がんが1位となっています。また大腸がんも食事の欧米化のためか増加傾向にあり近い将来男女ともがん疾患の1位になると予想されています。胃がんは日本が世界でも有数の発生数、死亡数であったため、国が中心となって胃がん検診が行われました。その成果として男女とも発生、死亡者数とも減少を示しました。
最近は特定健診(いわゆるメタボ健診)に国の軸足が移り生活習慣病が注目され、がん検診は市町村など地方自治体が実施主体となっていますが、受診者数は伸び悩んでいます。胃がんは日本では未だがん疾患の上位を占める重要な疾患です。そこでドックなど健診施設での胃がん検診受診が重要となっています。

胃がん検診の実際

胃X線検査と胃内視鏡検査の2種類があります。胃X線検査で異常があれば内視鏡検査となり2度手間となる可能性があります。また色違い(発赤)だけの病変は内視鏡でなければわかりません。さらに胃X線検査では腹側粘膜が盲点となります。このように一概には言えませんが内視鏡検査の方が早期胃がんを発見するのに有利と言われています。発見された早期胃がんの中には内視鏡的に切除可能なものもあり受診者の大きな負担軽減にもなります。このような観点からも胃がん検診は内視鏡検査での実施をお勧めします。

胃内視鏡検査

経口内視鏡と経鼻内視鏡の2種類があります。

経口内視鏡

のどを通過し舌の付け根を圧迫するため吐き気が起きやすく経鼻内視鏡と比べ苦しいと言われています。しかし、検査に慣れた受診者に熟達した術者が実施すればスムースに実施でき太い内視鏡で実施できるため、観察力は優れています。

経鼻内視鏡

利点は何といっても検査が楽なことで舌の付け根が圧迫されないので吐き気が起こりにくくまた普通に会話もできますが、観察力は経口に比べて落ちます。このようにそれぞれ一長一短があるのでその特性を理解した上で選択していただければよいと思います。ちなみに最近では8割の方が経鼻内視鏡を選択しています。

胃X線検査、内視鏡検査いずれも一度だけの検査でなく定期的(1年に1度) に検査を受けるのが病気を見つける上で重要なことは言うまでもありません。

H.ピロリ菌感染

ピロリ菌の感染は十二指腸潰瘍、胃炎、胃潰瘍、一部の悪性リンパ腫の原因といわれています。また胃がんの原因とする説もあります。日本人では半数以上の人が感染しています。胃潰瘍、十二指腸潰瘍の方は保険で除菌療法が受けられます。そのためには胃X線検査あるいは内視鏡検査を受けて胃潰瘍、十二指腸潰瘍の診断が必要です。また潰瘍のない方でも除菌を希望される方は自費で可能です。除菌が成功したかの確認は1ヶ月後尿素を飲んだ前後の呼気中の二酸化炭素の量で判定できる尿素呼気試験で可能です。